第7回がんと代謝研究会の開催にあたって
神経膠腫で、イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)遺伝子の活性型変異が発見された2008年からほぼ10年が経ちました。IDH1、IDH2の変異体が産生する2ヒドロキシグルタル酸というヘンな代謝物が、エピゲノムを撹乱するらしい、こういう代謝物をオンコメタボライトというわけね、と論文を読みながらゾクゾクと鳥肌がたつような気持ちになったことを覚えています。がん細胞が正常細胞とは異なる代謝を用いているという概念は、すでに20世紀初頭のオットー・ワールブルグにより提唱されていましたが、2000年にはいって間もなく、コハク酸脱水素酵素やフマル酸ヒドラターゼなど、代謝酵素遺伝子ががんで変異していることが見出され、がん研究において代謝を理解することの重要性が再認識されはじめました。
質量分析や核磁気共鳴などの技術の著しい発展により、代謝物の網羅的解析、新規代謝物の同定、代謝物の定量、さらに安定同位体を用いたトレーサー解析・フラックス解析などが可能になり、生化学における代謝研究が大変な盛り上がりを見せています。こうした技術的な背景は、代謝という視点からがんの特性を理解し、治療標的としての可能性を検討するという研究領域の確立に大変重要な役割を果たしました。セントラルドグマの上流に位置する核酸やタンパク質が、ある程度一定の解析方法で網羅的に全貌を調べることが可能であるのに対して、最下流の代謝物は極めて幅広い多様性を有しており、個々の代謝物の性質に応じた解析手法をもちいなければ検出ができません。代謝物には、まだまだ私達が気づかない未知の、しかし、重要な生物活性を有するものが数多く存在しているはずです。代謝研究はこれからの生命科学研究において、大変大きな伸び代を持った領域といえます。
がんと代謝研究会は今回で7回目を迎えたことから、すこし新しいテーマを盛り込むことにいたしました。一つは、近年重要性が急速に明らかになってきたがんの免疫療法を念頭におき、免疫細胞と代謝に焦点をあてたセッションを設けました。また、今回は、東北大学加齢医学研究所でお世話をさせていただくことから、全国共同利用・共同研究拠点である加齢医学研究拠点の活動の一環としてのシンポジウムを兼ねさせていただき、当研究所のテーマの重要な柱であるストレス応答に焦点をあてたセッションを設けました。さらに、代謝物を利用したユニークな診断方法の開発についてのセッションも設けました。特別講演は、東京大学の上田泰己先生をお招きして、システムとしての生命の捉え方を勉強させて頂く予定です。まる2日間、仙台の美味しい食事で胃袋も満足、一流の研究者と新進気鋭の若手研究者の講演で旺盛な知的好奇心も十分に満足していただけるものと確信しております。そして、研究者同士の交流から、多くの優れた共同研究がスタートすることを期待しています。
質量分析や核磁気共鳴などの技術の著しい発展により、代謝物の網羅的解析、新規代謝物の同定、代謝物の定量、さらに安定同位体を用いたトレーサー解析・フラックス解析などが可能になり、生化学における代謝研究が大変な盛り上がりを見せています。こうした技術的な背景は、代謝という視点からがんの特性を理解し、治療標的としての可能性を検討するという研究領域の確立に大変重要な役割を果たしました。セントラルドグマの上流に位置する核酸やタンパク質が、ある程度一定の解析方法で網羅的に全貌を調べることが可能であるのに対して、最下流の代謝物は極めて幅広い多様性を有しており、個々の代謝物の性質に応じた解析手法をもちいなければ検出ができません。代謝物には、まだまだ私達が気づかない未知の、しかし、重要な生物活性を有するものが数多く存在しているはずです。代謝研究はこれからの生命科学研究において、大変大きな伸び代を持った領域といえます。
がんと代謝研究会は今回で7回目を迎えたことから、すこし新しいテーマを盛り込むことにいたしました。一つは、近年重要性が急速に明らかになってきたがんの免疫療法を念頭におき、免疫細胞と代謝に焦点をあてたセッションを設けました。また、今回は、東北大学加齢医学研究所でお世話をさせていただくことから、全国共同利用・共同研究拠点である加齢医学研究拠点の活動の一環としてのシンポジウムを兼ねさせていただき、当研究所のテーマの重要な柱であるストレス応答に焦点をあてたセッションを設けました。さらに、代謝物を利用したユニークな診断方法の開発についてのセッションも設けました。特別講演は、東京大学の上田泰己先生をお招きして、システムとしての生命の捉え方を勉強させて頂く予定です。まる2日間、仙台の美味しい食事で胃袋も満足、一流の研究者と新進気鋭の若手研究者の講演で旺盛な知的好奇心も十分に満足していただけるものと確信しております。そして、研究者同士の交流から、多くの優れた共同研究がスタートすることを期待しています。
第7回がんと代謝研究会
実行委員長 本橋ほづみ
東北大学加齢医学研究所 加齢制御研究部門
遺伝子発現制御分野 教授
実行委員長 本橋ほづみ
東北大学加齢医学研究所 加齢制御研究部門
遺伝子発現制御分野 教授